イメージトレーニングって、スポーツの分野ではかなりの効果があると言われていますが、ちょっと眉唾な感じもしますよね。
それに運動やスポーツ以外でもイメージトレーニングが取り入れられています。
このように、いろいろな人がイメージトレーニングについての効果を紹介してくれているのですが、イメージトレーニングには効果が無いという情報もあるんです。
ということは、イメージトレーニングにより本当に効果が得られるのかって気になりませんか?
そこで、今回はいろいろな分野でイメージトレーニンの効果に関する研究論文をいろいろ調べてみました。
それらの論文をもとに、いくつも紹介されてある論文から2つの分野での驚きの効果とちょっとばかり注意する点について紹介しますね。
1.運動・スポーツへのイメージトレーニングの効果に関する論文
1-1 有名な指タッピングの論文
運動やスポーツにおけるイメージトレーニングの効果に関する研究は数多く行われています。
その中でも、非常に有名であちこちで引用されている研究論文は、1995年に発表された「系列指タッピング」についての研究でしょう。
これは運動とかスポーツそのものではなく、ピアノを使った指をタッピングさせるものでした。
イメージトレーニングの実施により、タッピングの精度にどう関係するのかということが研究されています。
そして、この論文ではイメージトレーニングによってタッピングの精度があがったことが示されています。
ただし、これでは「たった指の動きだけかよ!」っていう感じですよね。
1-2 イメージトレーニングで筋肉が強くなる?
指タッピング以外にも運動やスポーツに関連する論文では以下のようなものもあります。
1991年に発表された研究では、30分のイメージトレーニングにより筋肉増加の効果が得られたことが示されています。
上の研究は英語ですから、日本語で書かれた論文を紹介しておきますね。
この研究では、イメージトレーニングを行うことで筋肉増強の効果が得られたことが示されています。
これらの論文を踏まえると、筋トレをするなら、実際に筋トレしていない時も筋肉をトレーニングしているイメージを持つことで効果がより得られるということになります。
そのため、イメージトレーニングはどんどんやった方がよさそうですよね。
2.運動やスポーツ以外でイメージトレーニングの効果を示した論文
2-1 集中力向上や不安、緊張の緩和
実はこのイメージトレーニングや運動やスポーツ以外の分野にも以下のような分野でもいろいろな効果が見られています。
・面接における集中力アップ
・スピーチをする時の不安解消
・あがりを抑える
4つ目の技術習得を除くと、メンタル的なものが多いですよね。
その内容をもう少し見てみましょう。
■イメージトレーニングによる面接時の集中力アップ
この研究によると、イメージトレーニングを1時間程度することで面接時の集中力が高まったとしています。
これは5分間の瞑想よりも高い効果が得られているとあります。
五十嵐拓也等「面接場面のイメージトレーニングと瞑想の有効性の検討」日心第72回大会(2008)
■スピーチでの不安解消
上と似たような研究ですが、面接場面とスピーチの場面では、イメージトレーニングをすることでスピーチ時の不安感を低減させる効果が見られたようです。
岡林尚子等「スピーチ不安に対するイメージトレーニング方略の効果に関する検討」行動療法研究,第18巻,第1号,1〜9,平成4年
■あがりの克服
自立訓練法とイメージトレーニングの実施が、コンサートにおける「あがり」を抑える効果があったことが示されています。
しかも、演奏時における過度な緊張が起きなかったのに加えて、高いパフォーマンスで自分自身でも満足のいく演奏ができたという効果も得られていました。
新山眞弓「ATを用いた「あがり」克服法の有効性に関する研究 ージョイントコンサートを対象としてー」実技教育研究 (20), 41-50, 2006-03
2-2 イメージトレーニングによる技術習得の効果
スポーツ以外の技術習得への効果も様々研究されています。
■英語のライティング力
直接的なイメージトレーニングからは外れるかもしれませんが、英語文章の構成のお手本を真似ることで英語のライティング力の効果を高めることに効果があったとあります。
山岡大基「『視写の書』を用いた高校生の英語ライティング技能向上」広島大学附属中・高等学校中等教育研究紀要〈第63号 2016〉
■ピアノの演奏技術の向上
初見での演奏後、実際に練習した場合とイメージトレーニングをした場合では、実際にピアノを弾いた場合より効果は無かったものの、イメージトレーニングをした場合でもピアノが上手くなったそうです。
戸川晃子「イメージトレーニングがピアノ初学者に及ぼす効果についての研究①」神戸常磐大学紀要第7号
もう少し専門的な技術の習得や学習もイメージトレーニングで実施されており、その効果も確認されています。
■看護技術の習得
これはイメージトレーニングとは言えないかもしれませんが、映像を使った看護技術の習得が進むことが紹介されています。
自分でイメージするのではなく、映像を見ながら実際の方法をイメージできるようにし、技術習得をしようというものです。
真嶋由貴恵「看護技術のスキル学習とノウハウ集約における映像活用」映像情報メディア学会誌 Vol66 No.8(2012)
■救急隊員の技術習得
上と同じようなものですが、こちらの場合は救急隊員の学生に対する机上シミュレーションによるイメージトレーニングを実施することで、実際の現場対応方法についての理解を深めることができたとあります。
荒木徳孝等「机上シミュレーションを利用した救急隊員教育の効果と今後の課題」倉敷芸術科学大学生命科学部論文2014 年 10 月 1 日 受理
このように、イメージトレーニングは運動やスポーツ関係以外にも多方面で効果が得られることが研究論文の形でも紹介されています!
3.イメージトレーニングの効果をより高める方法がある
これらの論文の中で、イメージトレーニングの効果をより高めるための方法が紹介されているものもありました。
その内容を紹介してみます。
①運動を行う前に動作の映像をよく観察すること
自分自身で実際やっているところをイメージする前に、行う運動の観察をしっかり行うことが大切のようです。
運動を観察すると運動前野や下頭頂小葉が賦活するんだそうです。
これをミラーニューロンシステムというそうで、まず、しっかり観察をしてみるということですね。
②触覚などの感覚を使う
イメージする時に、手を使ってみる等の触覚を使うことが有効とされています。
例えばトレーニングをする時に使う道具を実際に触ってみるということです。
イメージする動作と関連した触覚の刺激が有効と考えられています。
以上の2つのポイントについては、以下の論文を参考にしました。
水口暢章ら「運動イメージと運動パフォーマンス」計測と制御 第 56 巻 第 8 号 2017 年 8 月号
4.イメージトレーニングで効果を得ようとする時の3つの注意点
このようにいろいろな分野でイメージトレーニングは効果があるとされていますが、注意する点もいくつかありました。
4-1 全くできない運動では効果無し
運動について言えば、イメージトレーニングのみでは効果が少ないんです。
研究では、
全くできない運動のイメージトレーニングでは効果は無い
とされています。
そのため、まったくできない運動をイメージトレーニングをするだけではうまくならないとのこと。
このあたりはイメージトレーニングの限界といえそうですね。
4-2 イメージトレーニングにも休憩が必要
イメージトレーニングでも続けてやりすぎると精神的に疲れてしまい、パフォーマンスが悪化するとのこと。
そのため、イメージトレーニングを行う場合も適切に休息が必要なんだそうです。
イメージトレーニングは体を使いませんから、肉体的な疲れは無いと思ってしまいますが、実際は精神的な疲れが起きてしまうとのこと。
逆に言うと、メンタルトレーニングをしていて、「疲れた!」と感じなければ効果が得られていないとも言えそうですね。
4-3 自己啓発系のイメージトレーニングは逆効果
自己啓発の関連の情報に触れると、自分自身が既に「痩せている」とか、「成功している」というイメージを持つことが大切とよく言われていますよね。
あるいは「段々良くなっている」とか、「用意ができている」と暗示をかけるとか・・。
しかし、自己啓発系のイメージトレーニングについては大きな落とし穴があるので、結構注意が必要ということが、今回イメージトレーニングの論文を調べることでわかりました。
それは何かと言えば・・・
自己啓発のイメージトレーニングをすると、多くの場合
自分がイメージした状態とは逆の状態になる
ということが、実はイメージトレーニングの研究ではよく言われているんです。
その理由がわかると、本当に笑っちゃいそうになりますよ!
うまく行かない理由ですが、
・成功イメージを持つことによって、努力しなくなる
・目標達成のために立ちはだかる障害に挫折してしまう
からだそうです。
「既に成功している」とイメージすることで、今の状態に満足してしまい、努力をしなくなる・・・
もう一つは、簡単に成功したイメージがあるのに、実際はそうそう上手くいくものでもありません。
イメージでは「上手くいくはず」なのに、実際はうまく行かない原因を頑張って克服しようとしなくなるんですね。
まとめ
今回は様々な分野で効果が見られているイメージトレーニングについて取り上げてみました。
イメージトレーニングは、運動やスポーツの技能習得のみならず、
- 筋肉増強
- 集中力アップ
- 緊張の緩和
- ピアノや英語のスキル向上
- 看護や救急等の技術習得
等への効果も論文の中では示されています。
一方、自分ができない運動やスポーツではイメージトレーニングによる技術習得は難しいことや自己啓発では逆の状態を引き起こす場合があることをお伝えしました。
しかし、うまく行うことで自分自身の可能性を広げていくことはできそうですよ。